【新発見ゴッホの自画像】 農婦を描いた絵の裏に隠れていた?!
昨日はショッキングなニュースを見て色々と考えされた。
ロンドンのナショナル・ギャラリーにあるゴッホの「ひまわり」に、環境活動家によってトマトスープがかけられるという事件。
「命と芸術のどちらに価値があるのか? 」と生活費や気候の危機に対して、無策な英国政府への抗議らしい。
冬の停電や、暖房費の高騰に向けて対策しているイギリスの家族のことも頭に浮かびましたが、でも物を破壊するという抗議の方法は間違っている!
ゴッホ自身も生活費に苦しんだ経験がありますが、死後自分の作品がこのような抗議の対象になるとは思ってもみなかっただろうなぁ・・・
この騒ぎを起こした環境団体「ジャスト・ストップ・オイル(Just Stop Oil)」は、これまでにも、コートールドギャラリーや、ナショナルギャラリーでコンスタブルの絵を使って抗議をしている。
絵がガラスに守られていることをわかった上でやっているのだろうけれど、今回の液体をかける映像はかなりショッキングだった。
そんなゴッホの新たな自画像発見ニュースが出たのは2022年7月のこと。
印象的な自画像をたくさん残しているだけに、新しい発見がとても気になります。
発見されたのは、農夫の女性の絵の裏
今回肖像画が発見されたのは、スコットランド国立美術館(National Galleries Scotland)の絵の裏から!!
「農婦の頭部」という絵のX線検査で、裏にある自画像のイメージが見つかったのです。
▼「農婦の頭部」の絵はこちら。(美術館のサイトへ飛びます)
https://www.nationalgalleries.org/art-and-artists/4972
絵の裏・・と聞いて最初イメージが湧かなかったのですが、こちらの動画をみると、わかりやすいと思います。
「農婦の頭部」が描かれているキャンバスの裏は、厚紙を何枚も重ね合わせた状態になっているそうです。
なので現状では裏が隠されている状態になっているんですね。
絵を描き終えてからしばらく経ってからキャンバスを裏返し、裏面を自画像に使用したのです。
ゴッホは経済的に苦しかったため、このようにキャンバスを再利用していたそうです。
▼発見された自画像はこちらから。大発見に興奮している様子も伝わってきます。(美術館のYoutubeへ飛びます)
動画で語られていること
ゴッホの農婦の頭部と、厚紙で覆われた裏面には、これまで知られていなかった画家の自画像があります。
X線写真を初めて見たときは、もちろん大興奮でした。
私がこの驚くべき新発見を知ったのは、魚屋の前に並んでいたとき、同僚のレズリー・スティーブンソンからテキストメッセージが届いたのです。
私が何を発見したか当ててみて、と彼女は言いました。
私たちはゴッホの作品を3点所蔵していますが、突然もう一点、おそらく最もエキサイティングな作品を発見しました。
今まで誰も知らなかった肖像画を発見することはとても意義深いことです。
ナショナル・ギャラリーにとっても、この素晴らしい作品が新たにコレクションに加わることは、とてもエキサイティングなことです。
スコットランドの人々のコレクションであるということも非常に重要なことです。
表はオランダ、裏はパリで描かれた絵?
ゴッホは、「農婦の頭部」を、2年間(1883年12月から1885年11月)暮らしていた、オランダの南部ヌエネンで描きました。
有名な「じゃがいもを食べる人々」もここで描かれたもの。
自画像は、それからしばらくしてゴッホがパリに移って印象派の作品に出会った頃に描かれたと思われています。
色が鮮やかに変わっていくのがこの時期からなので、今はまだ見えないどんな色で描かれているのかも気になるところです。
オランダからスコットランドへ絵画は移動
この絵が人びとの前に登場したのは、ゴッホの死後アムステルダムのライクス美術館で開催された展覧会でのこと。
その後何人かの手に渡り、1923年にイヴリン・セント・クロワ・フレミングが手に入れました。
彼女はあのジェームズ・ボンドの作家イアン・フレミングの母親。
そして1951年にアレキサンダーとロザリンド・メイトランド夫妻のコレクションとなり、のちにスコットランド国立美術館に寄贈されました。
どのように絵を取り出すの?
これから修復は、何層にもなった接着剤と厚紙の下にある自画像を、オリジナルの絵も保存しながらの作業になるとのこと。
美術館の動画の中で最初に登場する、シニア絵画保存修復師であるレズリー・スティーブンソンさんが、このようにも語っている記事がありました。
「動物性の接着剤と油絵具の溶解度の違いを利用し、油絵具の層から接着剤を取り除くことが課題となります。」
聞くだけでも大変そうな作業ですが、これまでにも数枚の絵がキャンバスの裏から現れているそうです。
そのために、「農婦の頭部」の裏にも、何かが隠されているのではないか?と長年疑われていたのですね。
現在絵は展覧会で展示中
今、スコットランド国立美術館では、«印象派の味わい|ミレーからマティスまで、近代フランス美術の軌跡»という展覧会が開催中。
その中で、2枚の絵は展示されているそうです。
とは言っても、自画像の方はまだ厚紙の下なので、特別なライトボックスに入れられて、ぼんやりと浮かび上がるイメージが見れる。
そこには、つばのある帽子をかぶって、ゆるく結んだネッカチーフをのどにつけた髭面の人物が描かれています。
顔の右側は影になり、左耳ははっきりと見えている。
閉じ込められた状態から、取り出されるのはどれくらい先になるのでしょうか?
どんな色で描かれいるのか?
ゴッホはどんな表情をしているのか?
とても楽しみです。
(参考記事)
・スコットランド・ナショナル・ギャラリーHP
・Ghostly self-portrait of Van Gogh discovered on the back of his painting of a peasant The Art Newspaper
・Hidden Van Gogh self-portrait discovered behind earlier painting The Guardian
・Vincent van Gogh: Hidden self-portrait discovered by X-ray BBC