こんにちは。
2023年に突入しました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回のメイントピックはフェルメール展への旅として、今年の大フェルメール展でアムステルダムに集まらない9枚の絵について書きました。
そしてその中の、今はどこにあるのかわからない1枚の絵がどんな運命を辿ってきたのか少し掘り下げたいと思います。
そんな小説のように興味をそそられるストーリーを、丁寧に調査して書かれた本もご紹介します。
メイントピックに行く前に少しこれからのご案内を。
今年はこちらのメールレターに力を入れていくとともに、昨年ストップしていたカントリーハウスの発信も再び力を入れていきます。
カントリーハウス、オンラインツアーや、京都の邸宅カフェでカントリーハウスを語るティータイムも計画中です。
また決まりしだいご案内させていただきます。
2023年大フェルメール展に登場しない9枚の絵とは?
今回は今年オランダ、アムステルダムで開催される大フェルメール展に出展されない9枚の作品についてご紹介です。
タイトルにもしたとおり、見れない!と思うとなぜだか気になってしまいます。
以前にも書いたのですが、所蔵美術館から他へ移動することができない作品というものもあります。
例えば、今回ご紹介するメトロポリタン美術館の「眠る女」は美術館へ遺贈された時の契約で作品を貸し出すことを禁止されているそうです。
”メトロポリタン美術館で展示する”という条件で遺贈されているというわけなんです。
美術館のホームページには、貸出制限としてこのように書かれています。
This work may not be lent, by terms of its acquisition by The Metropolitan Museum of Art.
本作品は、メトロポリタン美術館の購入条件により、貸し出すことができません。
1913年にBenjamin Altmanという人物から遺贈された作品なので、その時の条件ということでしょうか。
とってもマニアックな情報ではありますが、興味がある方は「眠る女」の画像下につけている美術館ホームページのリンクから、Loan Restrictions(貸出制限)や、Credit Line(的確な言葉が分かりませんが提供者というような意味)を見てみると面白いですよ。
ということは、「眠る女」はメトロポリタン美術館に行かないと見ることができない!または、フリックコレクションの3枚の作品のように、美術館が改装などでやむおえず作品を移動される必要があるときしか外にでないということになります。
そのように考えると、所有者だった方の権限ってすごい影響力だと思いませんか?
この条件って永久的なのかしら・・・いつまでという期限があるのかしら・・・新たな興味が湧いてきました。
「2人の紳士と女」 ブラウンシュヴァイク、アントン・ウルリッヒ公美術館(ドイツ)
「絵画芸術」 ウィーン美術史美術館(オーストリア)
「天文学者」 ルーヴル美術館(フランス)
「ギターを弾く女」 ケンウッドハウス(イギリス)
「音楽の稽古」 バッキンガム宮殿王室コレクション(イギリス)
「少女」 メトロポリタン美術館(アメリカ)
「窓辺で水差しを持つ女」 メトロポリタン美術館(アメリカ)
「眠る女」 メトロポリタン美術館(アメリカ)
「合奏」イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館(アメリカ) 盗難後行方不明
イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館の「合奏」が辿ってきた運命
上記で、「眠る女」の所有者の権限って大きいよね?という話をしましたが、イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館の「合奏」も、なかなか興味深い運命を辿っている絵です。
現在の所有者は、美術館の名前にもなっている、イザベラ・スチュワート・ガードナー。彼女は1892年パリでフェルメールの「合奏」を購入しました。
しかし、絵は1990年3月17日の深夜、アメリカ、ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から合計13枚の1枚として盗み出されました。
犯人を美術館の守衛が目撃していたけれど、手がかりが不十分で解決しないまま時効に。
解決につながる情報提供者には500万ドルの報奨金も用意されいたり、色々な動きがあったが、未だに戻ってこないという状況。
彼女の作品の展示場所を変えてはいけない!と遺言通り、現在も美術館は絵がない額縁だけが掛けられいるなんとも悲しい状態になっているそうです。
美術品の盗難事件はよく起こっているのですが、数が少ないフェルメール作品だけにこの作品が無事に戻ってきたらそれは大ニュースになること間違いないですよね!!盗難事件は、「消えたフェルメールを探して」という映画にもなっています。
余談ですが、フェルメールの作品は少ない上に盗難確率が高い。「合奏」の他に下記の3枚の作品が過去盗難にあっています。(無事戻ってきている)
「ギターを弾く女」ケンウッドハウス
「恋文」アムステルダム国立美術間
「手紙を書く女と召使」アイルランド、ナショナルギャラリー
「手紙を書く女と召使」はなんと2度も盗難にあっている。当時作品があったのは、アイルランド、ダブリンにある、準男爵アルフレッド・ベイト夫妻のお屋敷。
無事に戻ってきた作品は、安全のため美術館に寄贈されている。
「合奏」に話を戻すと、1892年にイザベラ・スチュワート・ガードナーによって購入される前、所有者が20〜30年サイクルで変わっているということを、ジャーナリストの朽木ゆり子さんが著書「盗まれたフェルメール」で書かれています。
フェルメールがオランダ、デルフトで描いたのが1660年代中頃。
それから120年後の1780年5月にアムステルダムで売りに出されるまではどこにあったのかわかっていないようです。
その後はオランダ→フランス→イギリス→フランス→アメリカ→??
この移り変わりが興味深くて、本を読んでいるだけでは頭に残らないので、ちょっとまとめてみました。
汚い手書きで申し訳ありませんが・・・このように移っています。
1枚を巡る運命がフェルメールも知らないところでこんなに波瀾万丈に。
いつも感じることですが、たかが絵じゃないんですよね。
多くの人、国なども動かしてしまうものでもあって、美術品の持つ魅力って一言でなんて言えなくて、それがわからないからこそ多くの人が惹きつけられるのだと思ってます。私もその1人で沼にハマってます笑
「盗まれたフェルメール」朽木ゆりこさん著書
フェルメール好きの方なら、朽木ゆり子さんのお名前はよくご存知なのではないでしょうか?
とても興味深いフェルメールに関する本を出されています。
その中の一つ「盗まれたフェルメール」は、フェルメールの絵画盗難についてものすごい調査のもとに書かれた本です。
あとがきをみると、4年の歳月を・・・と書かれていました。
いやいや、その言葉を見なくても、主要参考文献の量を見たら伝わってくる。
今回ご紹介した「合奏」に関して、まるで小説読んでいるようにワクワクして、どんなこと書かれていたのか3つのポイントでご紹介します。
一つは、イザベラ・スチュワート・ガードナーがどんな人物で彼女がなぜこの「合奏」を購入したのか?という視点で書かれているところ。
二つ目は、イザベラが購入するまでの絵の所有者の移り変わり。
三つ目は、史上最大と言われた「合奏」の盗難事件について。
「合奏」以外の3枚の絵の盗難事件も書かれていて、フェルメールの絵を別の視点から見る、とても面白い内容だと思います。
去年もさまざまな美術館で有名な絵に対してテロ活動をするということが頻発してましたが、それだけ世界中にインパクトを与える行為になるということですよね。
美術品の盗難やテロはこれからも続いていくのかな・・・
そのようなことを考えながらこの本を読んでいました。
とってもおすすめな本です。
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次回1月17日はアート雑談回をお送りします。
こちらの新装メールレターになって、私らしさがより出てきて気に入っています!という感想を何人かの方々からいただきました。
ありがとうございます😃
美術史やアートについてのコンテンツが溢れてきて、これからAIによってさらに情報が多くなっていくところで、同じようなことを発信しても埋もれてしまうな・・・と感じています。
それならば、私しか書けないことをもっと意識しようとしたら、このような形になってきました。
きっと求められているものをあまり意識していないので、たくさんの方に共感いただける内容ではないかもしれません。
でも、美術を楽しむって情報を覚えたりすることではないし、一つの作品の後ろにはものすごく広ーい色々な世界につながっています。
そんなところに目を向けていくと、自分が囚われていることの小ささを感じるし、自信がない・・・って行動しないことが無意味だなとも感じます。
直感を信じて、2023年もちょっとずつ自分らしく生きていけるように視点を変えられるそんなメールレターになったらいいなと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いいたします♪